こんなこと考えています。

有機農業を始めたことで、東京で会社員をしていたころには意識しなかったことが頭に浮かび、見えていなかった世界が広がってきました。
それが、この先、どう生きていこうか考えるきっかけになりました。

生きることは食べることだとよく言われます。つまり、どう生きていくかを考えることは、何をどう食べるかと向き合うことです。

何をどう食べるか
その先にある農業っていったい何だろう

そんな問いから、作物の栽培にあたって、野菜や稲も生きているという意味では基本的に人間と同じなのではないかと思い始めました。

健全な土が健康な作物を育む

キャベツの苗
枯れ草などの有機物で作物周りの地表を覆うことで、乾燥を防ぎ、草を抑え、土の生きものに餌を与えて紫外線から守る。有機物被覆にはさまざまな効果がある。

しっかり睡眠をとり、きちんと食事をとってストレスなく生きていれば病気にかかりにくくなるものです。作物も健康に育てれば病気や虫にやられることはあまりありませんし、やられたとしても大きな被害にはつながりません。

農作物にとっての睡眠や食事の場は畑の土なので、当農場では作物が健康に成長する土を育てることを重視しています。

 

食べ過ぎは病気のもと

作物(植物)もたくさん食べると早く大きくなります。ですが、食べ過ぎでメタボになると病気がちになるように、早く大きく育てたいがために肥料をあげすぎてしまうと、病気の原因になります。ですので、与える肥料を少なめにして、健康な作物を育てることを心がけています。
また、人間がサプリメントや栄養ドリンクだけでは元気に育たないのと同じで、化学肥料だけを与えている畑では作物は健全に生育しません。だから、畑に十分なごはん(畑の主食となる堆肥など)を与えるようにしています。

堆肥は田畑の良質なごはんになる

 

健康なら薬(農薬)はいらない

健康な作物は病気や虫に負けることはありません。虫や病気にやられたら(やられそうになったら)農薬を使う、という考え方ではなく、虫や病気にやられないような元気な作物を育てることを目指していますので、たとえ有機JASで認められた農薬であっても、使いません。

有機JASの認証制度について詳しくはこちら
・有機食品の検査認証制度(農林水産省)

病気や虫で作物が大きな被害を受けたら、作物が何らかの理由でストレスを受けていたことが考えられますので、そのストレスの源を突き止めて予防する、という方法で健康な作物を育てていくのが当農場の考え方です。

 

野菜も人間も一人じゃ生きられない

枯れ草や作物の残さを食べて土に還す一役を担うヤスデ(幼生)

人間はひとりでは生きられません。作物も本来は単独では健康に育たず、ミミズやヤスデ、トビムシ、さまざまな微生物や他の植物など、田んぼ・畑のいろいろな生き物の活動があってこそ、健康な野菜が育つ健全な土が成り立つと考えています。

農薬を使うとこれらの生き物を殺してしまったり、悪影響を及ぼしてしまったりします。さらに、その影響はこれらの生き物を餌として生きている生き物にも及びます。うちが農薬を使わないもう一つの理由は、こうした田んぼや畑とともにある生き物たちを薬剤で殲滅するようなことはしたくないからです。

カマキリは畑の守り神と言われるが、餌となる生きものがいなければ生きていけないし、餌となる生きものにも餌が必要だ。

 

育てやすさ、売りやすさより「おいしさ」

「育てやすくて売りやすい」というのは農家にとってとてもありがたいことです。野菜の種を買うと、その袋には「育てやすさ」や「売りやすさ」に関係する、次のような売り文句がたくさん書かれています。

育てやすさ

早く育つ、発芽がそろいやすい、病気に対する抵抗力がある、暑さ(寒さ)に強いなど

売りやすさ

収穫量が多い、形がそろう、色がいい、大きくなりすぎない、日持ちするなど
たとえば、同じ種類の野菜を市場経由で一度に大量出荷する場合(スーパーの生鮮食品コーナーに並ぶような野菜のこと)、この「売りやすさ」はとても重視されます。

農業をとりまく環境が厳しさを増し続けるなか、これらの条件は農家にとってとても重要なことです。ですが、作物は食べ物ですので、それよりも大切なのはなんと言ってもおいしさだと思います。(安全で安心できるのは第一です)

早く育ち、病気に強くてたくさんとれる野菜でも、おいしくなければ長くは売れませんし、買ってくださった方も残念な気持ちになることでしょう。

昔と比べると野菜の栄養価や味が落ちたとは、よく言われることです。その理由はいろいろあると思いますが、ひとつは味より育てやすさや売りやすさが優先されてきたことにあるのではないかと考えています。

とはいえ、繰り返すようですが、私も農家の一人として、育てやすくて売りやすいということ自体はとてもありがたいことだと考えています。ただ、それよりもおいしさを重視したいのです。

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